コロナ破産から再起業へ向けて〜何度でもチャンレジできる世の中へ〜
・当協会は破産を推奨するものではございません。あくまで破産当事者による実体験の共有を趣旨としております
・法的なご相談および経営全般に関するいわゆるコンサルティング業務は行っておりません。予めご了承くださいませ。
日本再起業支援協会のホームページをご覧いただきましてありがとうございます!
メンバーの大村真吾と申します。
私は2017年1月、29歳のときに会社を設立しましたが、コロナの影響を大きく受ける業種だったこともあって2020年2月より業績が急激に悪化し、2021年9月に法人・個人ともに破産手続きを開始いたしました。
現在は法人・個人とも破産手続きは終結し、個人事業主として再起業に向けて準備を進めております。
本稿では私の起業〜破産までの経緯、破産後の状況などの経験を述べさせていただき、
・再起業に向けて準備中の元経営者のみなさま
・コロナや自然災害によってやむなく会社を畳む選択をとられた方
・いままさに経営に行き詰まり破産を検討している方
といった方々にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
1.プロフィール
1987年:北海道苫小牧市に生まれる
2006年:高校卒業後、奈良県で一人暮らしをしながら遺跡発掘作業員として働く
2007年:茨城県の大学に入学(考古学専攻)
2008年:大学在学中に個人事業主として富士登山ガイドの業務を開始
2011年:大学卒業。以降、毎夏富士登山ガイドの業務を行うため個人事業主として活動
2011年〜2015年:
飛び込み営業や居酒屋のキャッチ、webディレクター、ライター、アフィリエイターとして活動
2015年:居酒屋を経営している知り合いの会社にて居酒屋の店長、販促・広告業務を行う
2017年:飲食店の電話対応・ネット予約対応を代行するコールセンター業務を行う法人を設立
2021年:破産手続開始、以降フリーランスとして活動中
2.破産までの経緯
2017年1月に電話対応・ネット予約対応を代行するコールセンターを立ち上げました。
当時ではかなり珍しい、スタッフが完全在宅で業務が可能なコールセンターとしてスタートいたしました。
いわゆるグルメサイトに掲載されているお店の電話番号に電話をしたりネット予約をいれると、(私の会社と契約している店舗は)私の会社に繋がるようになっており、店舗のスタッフのように私の会社のスタッフが応対しその内容を予約帳アプリまたはLINEなどで共有する、という業務をおこなっておりました。
業績は右肩上がりで、3年後の2020年1月には全国で300ほどの店舗様を担当するまでに至りました。
しかしその直後の2020年2月、突然予約キャンセルの電話が終日鳴り続けました。
原因はコロナでした。
同年4月には緊急事態宣言によりクライアントのほぼ全店舗が休業。
私の会社の売上は突如としてほぼ0となりました。
その後も自粛営業などで居酒屋に予約するお客様が大幅に減少し、売上はコロナ前の2割ほどで推移していました。
また、間の悪いことにちょうどコロナが流行り出す直前に別の事業に投資したこともあってキャッシュがほぼなかったこと、新規事業に私がつきっきりにならざるを得ない状況になってしまったこと、「そのうちに元に戻るだろう」と安易に考えていたことから(実際にGoToEatのときは一時的に売上がコロナ前レベルに戻りましたので)、
対応が後手後手にまわり、
気づけば既に手遅れとなっておりました。
3.破産後の生活
破産手続きが開始し、財産のほとんどが失われてもやることはたくさんあります。
私の場合は売掛金の回収や破産管財人とのやりとりなどで1ヶ月くらいは慌ただしく過ごしました。
2ヶ月ほど経ってそろそろ仕事をしないとまずいとなり就活をしてみたのですが、正社員として人生で一度も働いたことのない、これといった資格やスキルもない34歳がすぐに働けるほど甘くはありません。
それでも税金は社長時代の収入から算出された額をしばらく払う必要があり、なけなしのお金がどんどんなくなっていくのです。
…とはいえ、実は破産後の生活も言うほど社長だったときと変わりませんでした。
たしかに私の全財産(現預金)と社会的信頼はほぼゼロになりましたが、妻のおかげで住む家を失うこともなく、路頭に迷わずにすみました。生活水準を起業前後でほぼ変えていなかったことも幸いしたかと思います。
日雇いバイトをしたりもしましたが、クラウドソーシングサイトやスキルシェアサービスなどを使い、なんとか個人事業主として収入を得ることができ、妻の協力もあって比較的はやく前向きに今後の生活を考えられるようになりました。
逆に言えば、もし独身であったら家を借りることもできず、路頭に迷うしかなかったでしょう。
とにかく会社がつぶれること、自分の生活が破綻することをリアルに実感してしまうと、とてもまともな判断力ではいられなくなります。
破産にかんする正しい知識もなく、イメージだけで「破産なんてあり得ない」「30代で破産したら生きていけない」と思っていましたし、実際に「破産するくらいなら死んだほうがマシ」と考えて自ら命を絶った経営者の話も身近にありました。
なによりも、私を信頼して業務を行ってくれていたスタッフ、取引先の方々、あらゆる方に迷惑をかけたことが、自分の財産と社会的信用を失うことよりもよっぽど辛かったです。
4.日本再起業支援協会での思い
私が日本再起業支援協会と出会ったのは、破産手続きの開始から1ヶ月ほど経った頃でした。
破産した直後、本当にこれからどうやって生きていこうか何も考えられなかったのですが、そもそも破産後に起業できるのか?ということすら知らなかったため、「破産 再起業」で調べてみたところでてきたのが当協会でした。
名前からして怪しい(当時はホームページもいまより怪しかった笑)と思いましたが、当時は「これからの生活の不安」と「やっと地獄から解放されたことへの安堵感」から、とにかく「同じ目線で話ができる人」を欲していたこともあり、清水代表にコンタクトを取りました。
活動内容としては、「再起業支援」という名前ではありますが、ビジネスモデルの提案だとか、資金調達方法だとか、いわゆるコンサルティング的なことをするのではなく、あくまで
・傾聴
・実体験の共有
を通じて、生活の立て直し〜再挑戦への準備を伴走させていただくというものです。
私自身、30代で破産したらもうまともに生きていけないと本気で思っていましたし、実際に20代・30代の経営者で「破産するくらいなら死んだ方がマシ」と思って自ら命を断つ人もいます。僕の同年代の知人でもコロナ禍で自殺した経営者はいます。
でも、いざ破産してみると、たしかに僕の全財産と社会的信用度はほぼゼロになりましたが、死ぬほどのことではなかった。
それを多くの経営者に知ってほしいと思います。
「経営者は孤独」と言いますが、こと経営が行き詰まった時に相談できる相手というのはほぼ皆無です。従業員や取引先はもちろん、金融機関・顧問の先生・家族にだって言えません。
まして未知のウイルスや天災といった、「自分は何も悪いことをしていない」のに経営が悪化した場合、どうしても「納得いかない」「なぜ自分なんだ」というやり場のない感情に苛まれます。
そしてどんどん正常な判断、合理的な思考力を奪われ、宗教に献金するが如く無駄な出費を重ねる負のスパイラルに突入します。時にはそんな精神状態につけこむ詐欺師すら現れます。
自分の立場をちゃんと理解してくれた上で話を聞いてくれる人がいたのなら、どんなに救われたか…
破産の話だけではなく、破産の以外の方法(事業譲渡・民事再生・特別清算・会社分割・経営者保証…etc)についても、本当に行き詰まる前に知っていたのなら、他の選択肢を選ぶこともできるし、従業員・取引先・家族にもっとも迷惑の少ないやり方を模索できます。
少なくても、私は破産する数ヶ月前にこの団体について知っていたのなら、破産以外の道を選ぶことができたと思っています。
初めから「終わり」について十分に吟味したうえで起業する人なんてまずいません。
ですが、日本ではやたら起業・スタートアップに関する支援やセミナーは豊富なのに、再起業・再チャレンジに対する支援はまずありません。
あったとしても「前例がない」と言われてはじかれるだけの名ばかりなものであったり、当事者側の心情・状況を読み取っていない形式的な支援(ただの創業支援となにもかわらないもの)だったりしています。
一度目と二度目の起業は根本的に異なるのですが、当事者以外にはなかなか理解されないものです。
入口は用意するのに出口については何も言わない・すべて自己責任というのは、日本文化の特徴的な弊害かと思います(大学受験や就活なんかも然り)。
そして、「一度失敗したらそこで終わり」という社会的風潮が、日本でユニコーン企業が生まれない大きな要因であるとも思います。
何度でもチャレンジできる世の中へ…という変革も求められます。
とはいえ、それを当事者である私たちだけが主張したとしても、ただの「負け犬の遠吠え」であり、自己弁護でしかありません。
日本再起業支援協会は、破産当事者ではない元銀行員さんや身内が破産した経験があるといったプロボノさんも多く参加されていることも、大きな社会的意義をもっていると思います。
むしろメンバーは破産当事者以外の方が多いです。
とくに身内に経営者がいる方は、その方に最悪の事態があった場合は負の遺産も引き継ぐことになりますので(連帯保証人としての地位も相続されます)、破産に対する正しい知識をもっておくことは当事者に限らず大事な意味をもっていると思います。
長々と書きましたが、
・過去に経営者としての経験があるものの、なかなか再起業に踏み出せない元経営者
・経営状態が芳しくなく倒産、破産を検討している現経営者
・いまは問題ないけどいずれのときのために正しい「出口」の知識、経験を知っておきたい経営者
・近しい人に経営者がいる親族や知人
といった方々に認知してもらえるよう、現在NPO化の準備を進めています。
決して破産を推奨するわけではありませんが、自ら命を断つ前に、少しだけ、経験者の話に耳を傾けていただければ幸いです。
今後も体験談や破産・倒産に関するコンテンツを追加していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします!
1987年、北海道苫小牧市に生まれる。
地元の高校を卒業後、奈良県で遺跡発掘作業員として1年間過ごした後、筑波大学人文・文化学群人文学類(考古学専攻)へ入学。在学中に富士山の登山ガイド業務を行い、以来毎年夏は富士山で過ごしている。
卒業直前に東日本大震災により就職内定先が会社ごと失くなり、また「毎年夏は富士山にいきたい」という想いを捨てきれず、国立大学新卒という資格を捨てることを決意。
大学卒業後、個人事業主としてフリーの営業マン、ウェブディレクター・ライター、居酒屋店長を経て、飲食店に特化した集客・予約管理の総合サービスを請け負う「合同会社アルケー」を設立。当時としては珍しい「完全在宅型」の就業環境を構築。
2020年2月よりコロナの影響から急激に業績が悪化し、2021年9月に破産手続きを開始。現在フリーランスとして活動中。
スピードスケートでインカレ・国体出場、フルマラソン2時間48分と実は体育会系。
2015年、キーボードを背負って富士山山頂に単独登頂し、(たぶん史上初の)富士山山頂でのキーボード演奏を達成。